渡辺 章博 佐山 展生 井上 光太郎
中央経済社
売り上げランキング: 32103
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USにおけるM&A慣行の記述が参考になりました読後の満足度が、ここ最近の中ではずばぬけて素晴らしい本です。おすすめです。
企業価値評価の方法論(NPV,APVなど)および、買収の方法論(現金対価買収や株価対価買収)などの基本的なM&Aの枠組みの説明が充実していて、非常に理解しやすいです。
ライブドアが日本放送を買収しようとしたときの事件などの理解がいまさらながら深まります。株式交換ってこういうことか!といったみたいに。TOBとかLBOについても。
買収プレミアムという考え方を理解すると、Win-WinのM&Aが存在しうるのことがわかります。
適正な企業価値で買いたいと思うのが買い手の素直な気持ちでしょうが、適正な価値であれば売る方にはなんのインセンティブも働きません。適正評価価値より高いから売り手は売るんです。んじゃ、買い手は損をするかというとそんなことはなく、適正評価価値+シナジー価値より安ければ買った方が得なわけです。ちょっと考えれば当然だけどね。
また、ガバナンスと銘打ってるだけあり、M&Aにおける取締役会の責任について非常に重点をおいて説明してあります。
M&Aとは投資であり、買収コストの回収がされる必要があり、回収されない場合は株主価値が破壊されます。
単なる利益や売上を増やすためだけの規模拡大のM&Aは、株主価値を破壊する可能性があるため、取締役会はそんなことはしてはいけないと繰り返し繰り返し書いてありますね。
買収対象企業と買い手企業のそれぞれの株主の価値を高めるにはどうするのか、それぞれどうやって自分の株主の利益を保護するのか。少数株主と大株主の間の利益相反をどうするのかなどについて、こまかく書いてあります。
逆に言えば、日本企業では株主価値とかは重視されず、どんどん経営陣によって破壊されていることも実感できます。(泣
個人的な感想としては、コーポレート・ファイナンスの基本ルールを理解するのに、この本は最適だと思います。
投資意思決定の中でも、もっと大規模なものがM&Aであるため、株主への影響も多くなります。そのような投資案件を教材に、株主価値経営を学ぶと非常に理解が進むと思います。
企業内の投資とは、なにをもって成功とするのか。経営陣はなにを基準に意思決定をしなくてはならないのか?
われわれにとっての価値判断基準はなんなのか?
資本主義社会で企業人として働く以上、知っておくべきことが一冊に簡潔にまとめられています。おすすめの一品です。

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