2008/01/13

現代ファイナンスの基礎理論

現代ファイナンスの基礎理論
高森 寛
東洋経済新報社
売り上げランキング: 250953
おすすめ度の平均: 4.0
5 ファイナンスの基礎には最適
5 高森先生最高
2 説明不足が否めない本



ひさびさに(大学院で理論物理をやってた頃以来)王道の専門書を読んだ感じですね。
しっかりと、がっちりと、かっちりとファイナンスの基礎理論が展開されています。

3章まではほぼ完璧に理解し章末問題も解いてたのですが、4章からは電車で読んだので8割理解くらいですね。章末問題の解答がどこかにあれば、全部やるんですが、ネット上にもないみたい。それが残念。でも3章までの感じじゃ、いい問題が多い。

さて、題名の通り基礎理論です。あまり応用が数学のしんどい議論等まで踏み込んでいません。線形代数と確率統計がわかってれば十分に読みこなせるかな。微積分は4章で多少使うくらいですね。
ただし、簡単では決してありません。数学を使ってしっかりとした理論展開がされています。特に高校のベクトルがわからない人はちょっとつらいかな。例もそれなり豊富で、各章もそこまで議論が長くないので、1章づつしっかりと読むのがおすすめです。


さて、内容です。
第1章~第4章くらいまでは、比較的他の参考書にあるようなオーソドックスなトピックですね。
NPVやMM理論、モダン・ポートフォリオ理論、デリバティブの理論が、かなりしっかりと議論されています。
ただ、すべての項目が他の本のように曖昧でなく、理論の前提がどこにあり、どのような論理展開かは非常に明確です。この本で、学んだ範囲はおそらくずっと後になっても変更されることはないんじゃないか。
(通常は、勉強しなおすと、より詳しくとかより正確に理解しなおすはめになる教科書が多い)
ただ、4章のデリバティブのところは、確率微分方程式とかまでしっかり踏みこまないので、中途半端な印象が残りますね。他の本で、いろいろ知ってるからだと思うけど。さらっと、つまみ食いしただけみたいな。
それでも、さらっとした文章の中から、危険中立と無裁定の関係とか、状態価格の考え方とか、他の本ではピンとこなかった部分が、はっと気づけるところに、著者のセンスのよさを感じます。
キャッシュフロー分析のところですが、通常の教科書と違いリアルオプションについて説明してあります。というより、この本はコーポレート・ファイナンスの部分はすごい弱いように思います。2章のMM理論のところもあっさりだったし。なので、コーポレート・ファイナンスをしっかりやりたい人用の参考書ではない。
ただし、個人的にリアルオプションについて非常に興味が湧いたので、引き続き勉強してみようと思います。
第6章~第7章では、金利や債権、そしてポートフォリオ運用等について議論されます。
新しい概念というよりは、ここまでで展開されてきた概念で、こんなことまで説明できるのか!という新鮮な驚きがいっぱいでした。
債権の値段ってこう決まるんだとか、株価指数先物ってこういう風に役立つのかとか、おーリスクヘッジってこうやってやるのかとか、かなり感動が沢山ありました。機関投資家とかやる人がファイナンスの勉強が必須なのは、当然ですね。これは。
こういう観点でファイナンスを理解できたのは、かなりおもろかった。
第8章ですが、なぜここにあるのかなぞ。第3章のあとにあればいいじゃんくらい、あっさりとマルチファクター・モデルについて説明がでてきます。あまり、感動はなく、CAPMとあんま変わらん。変数が多いだけかなと。
第9章は、数学的補遺なのでコメントなし。
(080817 追記) ここは,期待効用仮説や状態価格を数理的にしっかりまとめているので,一読の価値ありです。初読のときは,よくわからんかったけど。(笑
全般的に非常に学習効果が高い書籍だと思います。
一通り簡単な本で、ファイナンスの学問領域を洗ったあとにじっくりと時間をかけて読むことをお勧めします。
この本で基礎固めをしておくことが、この先何倍にもなって返ってくると思います。いやぁ、いい本だった!
何度も読み返すことになるのだろう。

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