2008/10/23

M&Aストラクチャ論 week4

この授業ははずれがないですね。服部さんの本とあまり内容は変わらなかったりするのだけど、講義がとても面白くてわかりやすいのですよ。講義を一度聞いて著書を読むのが、一番効果が高そう。

今回は株式公開買い付け(いわゆるTOB)に関するトピックですね。

一番衝撃だったのが、Take-Over-Bidという用語が日本語だったこと!(笑
正しい英語は、Public Tender Offer なんだとか。どうやって、こういう最近のビジネス用語で和製英語ができるのだろう?


「有価証券報告提出会社」の「議決権付株式」を「市場外」で取引する場合は、買い付け後株式数が一定を超えた場合などTOBをしなくてはいけないというのがルールです。(強制される)
この「市場外」というのが、例のホリエモンのM&A騒動で問題になったとこですね。そこも以前服部さんの本で読んでいたのですが、やはり講義で改めて説明されてすっきり理解できました。
ToSTNeT市場というのは、そもそも自社株買いを相対取引で実現したいという企業側の要請を、あたかも市場内取引のような形で実現するために東京証券取引所が作った仕掛けといううさんくさい出自だったらしい。なので、ToSTNetでの取引はなんといわれようが市場内取引じゃないと当局はまずいらしい。
そこを服部先生いわくネット小僧につけいれられたわけです。ToSTNetで株式を大量購入することは、強制TOBの対象にならないわけですよ。それで、あの騒動が起こったあとに、ToSTNET取引は市場内としつつ大量購入などの特定条件下が強制TOB対象になるように法律につぎはぎされたそうです。(苦笑
ほかにも金商法には特別関係者の定義や、一連取引規制などのいろいろな規制があるのですが、それらも詳しく説明されました。
具体的なプロセスでは、実施のために必要な公告や、期間、義務、上限・下限など細かく説明されました。
また、金商法的には金銭以外の対価でのTOB、つまり株式TOBなども認められているのですが、税法がついていっていないため、実際に株式TOBをすると応募者は一度当該株式を売って、新しい株式を購入したとみなされて課税対象になってしまうそうです。
そのため、株式TOBは実務では実質上NGとなっています。だって、銘柄を交換しただけなのにキャピタルゲインに対する税金を納付させられて、そのあとで株価が下がった日にゃ目もあてられません。税金だけ取られるわけです。
しかも、結構含み益が多い場合などは、TOBに応募しただけでかなりの税負担が出るので、株を売らなきゃいけなくなったりするかもしれんわけです。
このような課税取引になるか、課税繰延になるかは、案件設計上非常に重要なポイントとなるそうです。
また、公開会社である子会社を他社に売却する場合に、この強制TOBルールがある場合は結構面倒なことになります。
強制TOBというのは少数株主保護の観点で定められています。つまり、相対で大株主の売り手だけが支配権プレミアムを独占することを禁止し、少数株主も売買に伴う買い手の支払う支配権プレミアムを分配しなさいということなのです。
服部先生いわく、自分が50%超の株式を保有している会社を売却する場合も、この規制にひっかかるのは納得いってないようです。なぜならば、株式売買において支配権プレミアムを享受する資格があるのは、対象会社を支配している株主だけだからです。もともと大して支配権を持っていないような有象無象の少数株主にそのプレミアムを分配するのはどうなの?みたいなところがあります。俺もそう思いますねー
さはさりとて法律は法律なため、自社の子会社を他社に売る場合には、さまざまな案件設計のもと、如何に売り手の株式をそのまま買い手にうつすかが考えどころだそうですね。
強制TOBの対象にならない33%までは相対で取引できますが、残りは17%は相対で取引できません。一連取引規制にひっかからないように3ヶ月待ったところで、通常であればTOBしなくてはいけません。ところが、TOBすればほかの株主も応募してくるため、買い手が希望通り51%の株式を握っても、売り手はすべての株式を売却しきることができなわけですなー
このときには、まぁいろいろ細かい工夫をしてなんとかするのが、M&Aアドバイザーの腕の見せ所なんだと。
しかし、実際には日本では意味のないことに、少数株主が応募しないようにディスカウントTOBなる意味不明な取引が多いそうです。つまり、市場価格より低い価格でのTOBをすれば損をするから誰も応募しないという理屈なんだとか…
ちゃんとした売り手なら、そんな安い価格で売るのは馬鹿馬鹿しいはずなのですが、なぜか日本ではそういうのが多いんだとか…
日本企業が、いかに株主価値向上を意識してないかがわかってしまいますねぇ…(泣
さてさて、その子会社売却時に如何に案件設計をするかが宿題になりました。おもろそうなので、がんばってやってみましょー!

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