2008/08/18

M&Aのグローバル実務

春学期の佐山ゼミで行った輪講の教科書です。
バイアウトの授業でもゲストスピーカーとして来ていただいた渡辺さんの著書になります。

M&Aのグローバル実務―プロセス重視の企業買収・売却のすすめ方
渡辺 章博
中央経済社
売り上げランキング: 138669
おすすめ度の平均: 4.0
4 チェックシート
3 米国企業買収の方法本
4 デューデリの記載が充実
5 実務向けの本
5 実務家からのアドバイス



服部先生の『実践 M&Aマネジメント』は,本中の単語を使えば経営者や担当者の意思決定や最適案件設計のための基礎知識であるならば,この本はどちらかといえばM&Aアドバイザーのための本と言えそうです。
副題にもあるようにプロセス重視で,実際のデューデリジェンスでの注意点などもとても豊富なので,自分がデューデリとかをやる前に確認することで,漏れなどがなくなるのでは?
オレみたいな非実務家にとっては,M&Aのデューデリの泥臭い部分を垣間見ることができるのがよいのではないでしょうか。
第1章~第10章は,買収ターゲットの選定方法から始まり,基本合意,デューデリジェンス,買収契約とクロージングまでの一通りのプロセスにおいて,やるべきこと,注意するべきことがしっかりと書いてある印象です。実務を経験してから読むと,更にありがたみがわかりそうなことが書いてますね。
全体的に買い手を意識して書いてあるようです。少し難を言えば,買い手の事業会社としてどこを自分たちで意識して,どこをM&Aアドバイザー等の外部者に意識させればいいかが混在となっていることですかね。まぁ,買い手のチーム全体で意識すればよいことという気持ちで渡辺さんは書いてあるのでしょう。
第11章・第12章は,どちらかというとストラクチャの部分になります。株式交換・株式移転・合併・会社分割について取り上げられています。他の株式買収などは第10章までに説明してるので,商法改正で株式交換や会社分割ができるようになってから,後付したようなイメージですね。(苦笑
第13章~第17章はEPS変動分析のところ以外は,『M&Aとガバナンス』と内容が重複していますね。というか,おそらくこの部分にフォーカスを当ててより詳細に記述したのが『M&Aとガバナンス』という位置づけなのでしょう。
取締役会は買収提案についてどう対応すべきかとか,パーチェス会計により責任者にどうやって達成責任を課すかとかが書いてあります。なかでも,勝手に渡辺さんが一番主張したいことを推測するに,DCF法は価格算定手法ではなく株主へのアカウンタビリティのための共通言語であり,社内の買収コスト回収のための共通言語だみたいなところでしょうか。
というわけで,全体的に前半と後半で少し趣の違う本にはなっているものの,一通りの領域をカバーしていて,よい本なのだと思います。自分が実務を経験することになったら,もう一度読み返してみると,また評価が上がる一冊なのでしょうね。
M&Aとガバナンス』をもう一度読み返してみたくなりましたねー
いま,読むと当時と全然違った理解が得られそう。

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