2008/08/31

ファイナンスのための確率解析〈1〉

金融数理の基礎の教科書です。
授業で取り扱わなかった第6章を読んでからブログに書こうと思ってたのですが,ちょっと数理ファイナンスの優先順位を落とすことにしたので,しばらく読めそうにないですね。

ファイナンスのための確率解析〈1〉二項モデルによる資産価格評価
S.E. シュリーヴ
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金融数理の基礎では,この本を第1章~第5章までしっかりとやることになります。
基本的に数学的な取り扱いにおいて一切の論理飛躍はなく,丁寧な記述で首尾一貫した良書だと思います。演習問題も豊富で,ネット上に自作の解答が見つけれられるので自習にも適していると思われます。
(ただ授業のレポート等で解答を見ていると,まったく実力がつかないのでおすすめしません。試験や連続理論へいくときに後悔するでしょう。)
第1章でリスク中立評価式によるオプション価格付けの計算をします。ここでは難しい数学の概念はなく,複製ポートフォリオを作り,式変形でリスク中立評価式を導出します。
第2章では,第1章の内容を条件付確率やマルチンゲールという概念などを導入し,数学的取り扱いを整備します。
正直なところ,2項モデルの範囲だけ見ていると第2章の高度な数学概念がなぜ必要かとかがまったくわかりません。ただ,有識者に聞くところによると,この辺をしっかり理解しておくと連続理論を学ぶときに有意義なんだとか。
第3章は状態価格とラドン・ニコディム微分が導入されます。このラドン・ニコディム微分も連続時間理論だとわかりやすいんでしょうが,2項モデルでは多少もてあまし気味です。
と,ここまで書くと,なんかこの本は微妙に物足りないのでは?などと思う人がいると思います。
数学が得意な人は,素直に第2巻の連続理論をやったほうがいいとオレも思ったりします。ただ,初心者はやっぱり2項モデルから入るのがよいと思うので,数学に自信がない方はここから読んだ方がいいですねー
第4章はアメリカン・デリバティブの価格付けです。
ここは正直一番難しかったですね。停止時刻という考え方が導入されるし,基本的に数式いじりが複雑化するため,背後の数学を理解するのが多少困難になります。
ちゃんと理解してしまえば,大したことではないのですが,とにかく数式いじりが多いです。写経と思って頑張りましょう。
第5章はランダムウォークです。ランダム・ウォークも離散時間をやってるレベルでは,ただの数学でファイナンス的な取り扱いは乏しいです。
第6章は派生金利証券で,どうしても読みたかったのですが,またの機会にすることにしました。
第6章を後回しにした理由も同じなのですが,この本はやはり次に連続時間理論をやる人に最適なんでしょうね。ここで勉強をやめてしまうと,中途半端な読後感は否めません。
てか,まぁ,連続時間理論をやらないのに,この本を読もうと思う人もいないと思いますが…(笑
ファイナンスのための確率解析 (2)』が連続時間理論ですね。一応買うだけ買いましたが,おそらくちゃんと読むことはしばらくないと思います。辞書代わりに使おうと思います。
さてさて,本当だったら夏季休暇中に連続時間理論を少しでもやるつもりだったのですが,少し時間が足りずに手がまわらない可能性が高くなってきましたねぇ…
秋学期の授業で知っておいた方がいいのと,計量ファイナンス系の人たちには授業があるので,多少負けたくないという幼稚な気持ちもあるのよねー(笑

2 件のコメント:

  1. この本は実に良く書けている本ですよ。間違いもあるが、他の本に比べると少ない。第1巻の離散的な部分は第2巻目を読んで初めてそのありがたみが分かるのです。例えば離散的な場合のラドン・ニコディム微分は離散的な場合の第1巻を、読んだだけでは全くわからないでしょうが、第2巻目の連続場合で納得が行きます。私はこの本をゼミの本として学生と読んでいますが、今年は2回目の学生です。

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  2. この本は実に良く書けている本ですよ。間違いもあるが、他の本に比べると少ない。第1巻の離散的な部分は第2巻目を読んで初めてそのありがたみが分かるのです。例えば離散的な場合のラドン・ニコディム微分は離散的な場合の第1巻を、読んだだけでは全くわからないでしょうが、第2巻目の連続場合で納得が行きます。私はこの本をゼミの本として学生と読んでいますが、今年は2回目の学生です。

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