2009/04/29

資源ベースの経営戦略

修士研究を考える材料として組織論を押さえようということで「組織の経営学」に続き読んでみました。立ち読みしたところ組織の経済学を踏まえた内容っぽかったので。

読み終わった感想としては、非常に分かりやすく全社戦略の本としては非常によいですな。ただ、経済学的取扱いはちょっと俺の思ってた内容とは違ってました…(泣

資源ベースの経営戦略論
デビッド J.コリス シンシア A.モンゴメリー 根来 龍之 蛭田 啓 久保 亮一
東洋経済新報社
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5 RBVの参考書として最適
5 企業経営戦略にとっての最強の教科書
5 全社戦略の解説は平易で明瞭
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5 戦略論の基礎をしっかり押さえています




まぁ、当然といえば当然でこの本には罪はありませんが、組織の経済学の結論を使って全社戦略を論じてるだけなので、経済学的な議論の部分は定性的なんですわな。
というわけで、当初の思惑とは違いましたが、全社戦略の本としてはかなりよいのではないでしょうか。いままで事業戦略の本は少しは読んだことがあったのですが、全社戦略の本というのは初めて読んだような気がします。
この本の特徴は競争優位ではなく、企業優位という概念を明確にしたことですね。
企業は保有する資源・事業軍・組織がすべて整合性を取れていて初めて、企業全体としての価値が出ると主張しています。そのバランスが取れていない企業は、各事業が専業会社として存在する場合に対して価値を創造できていないこととなり多角化企業としての存在価値はなくなってしまいます。
第1章に書かれている内容が印象的で

1) その事業を所有することで、企業内のほかの事業でベネフィットを創出しているか?
2) その事業から創出されるベネフィットは(その事業を所有することから生じる)企業の本社費用よりも大きいか?
3) 企業がその事業から創出するベネフィットは、その事業をほかの企業が所有した場合や現在とは異なるガバナンス形態を採用した場合を上回るか?

これがいえなければ企業優位があるとはいえないだそうです。3つ目のは日本企業は重く受け止め、しっかりと考えるべきですね。
と、全体としては如何に企業優位を構築するかという内容なのですが、個別の内容でも結構ためになることが沢山書いてあります。すべての章が理論編と実践編に分かれているのも、すべて読んだあとに見返すとわかりやすいです。
読んでいるときは若干全体像がわかりづらくなって、面倒だけど。(笑
あと、この本の章構成は若干理解しにくいように感じますねー
全体的な流れがよくわからなくなることがあるので、しょっちゅう前書きにある章ごとの記述内容を確認しながら読みました。全体感がつかめると非常にわかりやすいですけどね。

3章と4章では企業が保有する資源についてどのように評価するか?どのように資源を獲得していくか?自社の資源を活かした多角化はどのようなものか?などが議論されます。企業の競争優位の源泉は保有する資源であり、その資源を如何に活かした多角化をするかが大事であるという、資源ベース理論の基本的な考え方が示されます。3章では規模の経済と範囲の経済について説明がされます。

5章では垂直統合に関わる議論として、どの機能を市場から調達し、どの機能を社内に持つかということが経済学で言う取引費用理論というものを使って議論されます。企業の境界をどう決めるかということですね。

6章は多角化企業における組織のマネジメントをどうするかということで組織論に関する話です。ここの理論的取り扱いがもう少し踏み込んでくれれば修士研究に使えたんですけどね。(苦笑

7章は企業優位に関する章でこの本のそうまとめ的位置付けです。第8章のコーポレートガバナンスは別になくてもいい感じ。(笑

全社戦略という概念をはじめて学んだので読みながら戸惑うこともありましたが、読み終わってみると結構素晴らしい本だったように感じます。いま俺が所属する事業企画みたいな組織だと実践的にも結構使える考え方が多かったと思います。結構明日からの業務に活かせるのでは?
新規事業の提案とか成長戦略を議論するときに、市場の成長性とか議論することはあっても、自社の資源についてしっかりと議論することは社内でも少ないように感じます。また、他社の資源については更にそう。やはりポジショニングだけではダメで、資源に関する議論をしっかりとやらねばならんなぁ…
さて、とはいえ修士論文用にはもう一冊買っちゃいました。概論は大体もう分かったのでリファレンス用に使おうかと。分厚いのと経済学的取り扱いがしっかりしすぎてるので、全部読むには時間かかりすぎかなーと思うので。

組織の経済学
組織の経済学
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2 件のコメント:

  1. abs kawakitaです。お世話様です。
    私、履修している授業で 組織の戦略的デザイン(大湾秀雄教授)というのがあります。
    組織の経済学がまさに参考書指定の授業なのですが、大湾教授の論文記事集を教科書として授業で使っており、こちらはわかり易く130ページ程度で、管理人さんの論文趣旨に合っているかもしれません。授業はほとんどこちらですすめています。
    マネージャーのための組織と人事制度の経済学 というタイトルです。
    市販されてませんが、青山学内で1200円程度で買えます。
    必要であれば、私、買っときましょうか?

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  2. おー、面白そうです!
    是非ともください!
    お会いしたときに代金は払いますので!

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